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002:暇 の中から好きな歌。

002:暇

待ち時間暇もてあまし床見れば過ぎ行く靴は百人百様  のわ

病院や、市役所などの待ち時間だろう感じた。人がたくさん通り過ぎるくらいの長めの時間を、ずっと床の方を見ているということから、なにか特に楽しい待ち時間じゃないんだろうと思う。そういう時に、過ぎゆくだけの人の靴を見るともなく見ているのは、人間のリアルだと思う、人間的でそこがいいなと思った。


暇があれば会おうね(だけど暇だとは言わないくせに)三月の雪  高松紗都子

002:暇で、このようなモチーフの歌が結構あって食傷気味の中、この歌はきもちよく心に入ってきた。「暇があれば会おうね」は相手が言った言葉だろうか。その言葉を思い返しながら、でもあなたは暇だとは言わないくせに、と思う。三月の雪のように、これから無くなっていくもの、会えなくなっていく予感、そんな切なさが加えられている。相聞歌として読むのが魅力的かもしれないが、友人が言った言葉(また遊ぼうね、のような)とも、自分が言った言葉(また会おうねと、とりあえず言っておこう、のような)とも、とれる。


暇、とだけノートのはしに書きこんで頬杖をしたきみはほほえむ  いさご

暇という題でネガティブな歌が多い中、やさしくほの明かりしていると感じた。図書館だろうか、授業中だろうか。しゃべってはいけない状況の中、暇、とノートの端に書かれた文字は、自分に向けられている。そしてほほえみもおそらく自分に向けられている。青春って感じ。
もしくは、これはきみの自己愛を見ているだけの歌だったりしないだろうか。きみは、まっしろなノートの端に、暇とだけ書いて、(そう書き込んだ自分に酔いながら)頬杖をして微笑んでいる。それを見ている。


隙と暇からだじゅうから発散し思春期のむれ自転車で行く  リンダ

学校帰りの中高生が自転車で群れて通りすぎていくところだろうか。隙と暇、とはそういう若い体の感じを言い得ている。発散という言葉だと、まるで隙と暇が自転車をこぐことで解消されているようにも感じる。実際は解消されていないのだろうと思うので、外にまき散らしているととるべきなんだろう。隙、というところになんだかエロティックなものを感じる。ああ、そんなところまで見えてる、自転車に乗っていると、そうなるのに、というような。

書くことのどれもこれもが嘘っぽい暇にしているからだとおもう  本田瑞穂

たくさんたくさん書いてきた、書いている、そういう人の作った歌だと感じる。実感というか、真実があるのだろ思う。(できれば、暇だから嘘っぽいことしか書けないというのは真実ではあってほくないのだけど。)すんなりと、ため息をつくように歌われていて、そこがまた現実のことなんだなと思う。こころに残ってしまう。




自分用メモ:
題詠するとき、きっとこれが定番だろうなっていう内容を思い浮かべて
それ(お題から受けるもっとも一般的な感じ)を突き詰めたのを一首、
まったくそれに触れない、題を違う珍しい語にしたもので一首作るようにしたいなあ。って思う。

メモ2:
リアルだ、って褒めるのはどうなんだろう。褒めてることになるのかな。

メモ3:
この文章なんだか読む気になれない。つかみが悪いのかも。